Blue Hawaiian Helicoptersは、米国内で初めてTour Operator Program of Safety (TOPS) の認定を取得した企業です。 累計飛行時間で並ぶ飛行ツアー会社はなく、安全システム管理プログラムを米連邦航空局 (FAA) の指導の下に実施しています。この安全システム管理プログラムは、ISO 9000の品質管理システムのように安全保証に関するフィードバックループが取り入れられているという点でTOPSの要件よりも厳格なものとなっています。
1993年、特に飛行ツアー業界を対象とする安全対策プログラムの必要性が顕著になりました。ヘリコプターツアー事業者に優れた安全実績があったにもかかわらず、遊覧飛行業界は避けることができたはずの事故に見舞われ、業界は公共の安全に無関心であるという扇情的な報道がなされました。
Helicopter Association Internationalの主要機関の1つとして、Helicopter Tour Operators Committee (HTOC:ヘリコプターツアー事業者委員会) があり、米国の大手飛行ツアー事業者などが委員に名を連ねています。HTOCは、安全は最も重要な考慮事項であるとし、ヘリコプターツアー業界を対象とする安全対策プログラムの策定に取り組むことになりました。
ツアー事業者が、HAIのいくつかの常任委員会と協力しながら、後にTOPSの基本的なガイドラインとなる、詳細な安全対策プログラムの草案を作成しました。このプログラムには、業界トップの飛行ツアー事業者および飛行ツアー設備の製造業者として知られる企業の専門知識と経験が取り入れられました。
1995年には、TOPS安全対策プログラムの草案となるものが、連邦航空局 (FAA) だけでなく国家運輸安全委員会 (NTSB) にも提出されました。この安全対策プログラムのさらなる発達のため、それら2つの機関によって貴重な励ましと助力が提供されました。
1996年1月にTOPSが独立非営利団体として設立され、それと同時にTOPS安全対策プログラムが施行されました。当時は、ヘリコプターツアーのすべての側面の安全性強化を専門とする団体はTOPSのみでした。
TOPS安全対策プログラムの有効性は、1996年以降の統計によって明らかに証明されています。通常1年間で、米国の専門ヘリコプターツアー事業者のツアー飛行時間はおおよそ10万時間に上り、そのうちの約85,000時間はTOPSのメンバー企業によるものです。全体として、TOPSのメンバー企業は、一般航空よりもはるかに優れた累積的な安全実績を示しています。
TOPSのメンバー企業は、ヘリコプター観光ツアーを今日で最も安全な飛行種別にすることを使命に掲げ、安全を最優先課題としています。TOPSの認定を受けている事業者は、より高い安全基準の達成、安全に関する知識の共有、それらの安全基準の自己管理に努めています。TOPS安全対策プログラムは、以下の分野を対象としています。
企業の経営陣は、飛行ツアー業務で安全が第一に考慮されるようにするための基準を確立し、それらの基準が適用されるようにします。 それらの基準には、スリルを味わうことを目的とする飛行、曲芸飛行、超低空飛行、または不必要に急激な操縦の禁止が含まれます。また、TOPSは、各企業の安全管理責任者を対象とする外部の専門的な安全管理コース、職員の継続的な安全トレーニング、年次安全監査などが組み込まれた安全管理プログラムを確立することも要求しています。
TOPS指定の独立監査機関による定期的な安全監査を実施する必要があります。独立監査に合格することは、TOPS認定事業者となるための要件です。毎年、繰り返しの監査が必要になります。
また、経営陣は、毎日の業務が安全かつ一貫したものとなるように、明確なフライト運行基準と最低気象条件も設定します。 それらの基準は決して安全を損なうものではなく、専門家としてのパイロットの判断が常に尊重されます。
また、経営陣は、同じ空域内を飛行する他の事業者との調整を促します。定期的にミーティングを開き、経路、位置報告、騒音の緩和、安全手順を調整します。
TOPSのメンバー企業は、パイロットの運転記録証明書のFAA報告を使用して、パイロット全員の資格と経験を確認します。パイロットの最低要件は、ヘリコプターの機長 (PIC) として1,000時間、パイロットが飛行する領域で100時間の飛行実績があることです。
トレーニングでは、プロ意識、安全、細心の注意、米国連邦航空規則 (FAR) および企業の基準の遵守についての最大限の基準が強調されます。パイロット全員が最低限としてFAR Part 135の飛行トレーニング基準で規定されているトレーニングを受ける必要があります。 他にも、搭乗員の人材管理、飛行関連の意思決定、悪天候条件からの回復、航空機の運行計画、緊急時応答手順、乗客への説明についてのトレーニングが必要です。
連邦規制の高い基準を満たす整備を実施する必要があります。また、TOPSのプログラムでは、整備士は3年以上のヘリコプター業務実績とA & P (Airframe and Powerplant) 免許を有することが求められています。ファクトリトレーニングコースを含め、その他の技術トレーニングがTOPSの全メンバー企業から継続的に提供されます。
また、TOPSのメンバー企業は、整備の安全性を米連邦航空局 (FAA) のMaintenance Technician Awards Programや業界安全管理賞プログラムによって認められる必要があります。Maintenance Malfunction Information Reporting (MMIR) プロセスを通して整備情報を他の事業者と共有しなければなりません。技術ライブラリを維持管理し、すべての整備担当者が利用できるようにする必要があります。
整備の下請契約をする場合は、TOPSの基準に従うように下請業者に要求するものとし、下請業者も監査対象になります。
地上誘導員は、乗組員としてみなされ、運行の全体的な安全に本質的に寄与します。TOPSのメンバー企業の従業員は、乗客に対する安全およびフライト関連のその他の情報の説明、およびヘリコプターの間近で乗客を誘導する方法について、トレーニングを受け、資格を取得します。また、乗客の乗降時の補助、シートベルトの装着、および機体と所定のフライト手続きに関連する情報についてもトレーニングを受ける必要がりあります。必要に応じて、混雑しているエリアでは、ヘリコプターの動きを監視して離陸の補助をします。また、地上誘導員は、飛行追尾および航空機との無線通信を行い、緊急通報を提供し、必要時には事故対応手続きを実施します。
TOPSでは、メンバー企業に対し、連邦要件に加え、すべての機体に航空機用救命無線機 (ELTS) を装備することを要求しています。洋上飛行の場合は、緊急着水を安全に遂行するために浮遊器具を装備する必要があり、乗客各人とパイロットが適切な救命胴衣を着用します。
また、TOPSのメンバー企業は、悪天候条件からの回復のための夜間用VFR機器に関する連邦規制に準拠する設備の他にも、点滅する着陸灯、視認性の高い回転翼の羽根、閃光灯を含む、航空機の視界を強化する装置を使用します。
TOPS | FAR 135 | FAR 91 | |
---|---|---|---|
安全対策プログラム | ○ | × | × |
年次安全監査 | ○ | × | × |
専任の安全管理責任者 | ○ | × | × |
人的要因と飛行関連の意思決定についてのトレーニング | ○ | × | × |
継続的な安全管理トレーニング | ○ | × | × |
パイロット要件 (1,000時間の飛行時間と飛行領域に関する標準的な実績) | ○ | × | × |
最低安全高度500フィート | ○ | × | × |
最低1マイルの視界 | ○ | × | × |
最低バンク角 (30度) とピッチ角度 (10度) および円滑な移動 | ○ | × | × |
H-V曲線の回避 | ○ | × | × |
A & P整備士の3年以上の実務経験 | ○ | × | × |
整備工場トレーニング要件 | ○ | × | × |
整備士の年次トレーニング要件 | ○ | × | × |
航空機用救命無線機 (ELT) の必須装備 | ○ | × | × |
視認性の高い回転翼の羽根と点滅する着陸灯 | ○ | × | × |
夜間飛行の視界規則基準を満たす航空機設備 | ○ | × | × |
地上誘導員の専門トレーニング | ○ | × | × |